この記事でわかること
- 参加費・シューズ・交通費・宿泊費の線引き
- 経費にできる場面と、通らない理由
- 会社が社員の参加費を出すときの注意点
- 経費にするなら残しておきたい記録
LPを作りながら「これ、経費にならない?」と考えた
私は経理の仕事をしながら、ウルトラマラソンを走っています。
水都大阪ウルトラマラニック(70km)は、2026年4月に10年連続で完走しました。5月には奈良ウルトラマラソン(100km)を13時間48分32秒で走り切りました。
事務所のLPを作っているとき、ふと考えました。大会の参加費やシューズ代、会場までの交通費。これは経費にならないのだろうか、と。
分かれ目は「仕事との関係」
まずは、国税庁が示している基本の考え方から見ていきます。
個人事業主の場合、私的な出費(家事上の費用)は経費になりません。仕事と私用の両方にかかわる出費は「家事関連費」と呼ばれます。
家事関連費のうち経費にできるのは、仕事に直接必要だったと明らかに区分できる部分だけです。国税庁は「取引の記録などに基づいて」区分できること、としています。
目安は、仕事に必要な部分が50%を超えるかどうかです。50%以下でも、仕事の部分をはっきり分けられれば、その部分は経費にできます。
参加費・シューズ・交通費・宿泊費を1つずつ見る
趣味として出る大会を例に、4つの出費を並べてみます。
| 出費 | 原則 | 考え方 |
|---|---|---|
| 大会の参加費 | 経費にならない | 出る目的が自分の目標や楽しみなら、私的な出費です |
| シューズ・ウェア | 経費にならない | 普段の練習でも使うので、仕事の部分を分けられません |
| 会場までの交通費 | 大会と同じ扱い | 大会に出ること自体が私用なら、交通費も私用です |
| 前泊の宿泊費 | 大会と同じ扱い | 交通費と同じく、何のために泊まったかで決まります |
交通費や宿泊費は、それだけで判断するものではありません。「その大会に何のために出たか」で、まとめて決まります。
経費にできる場面はあるのか
では、大会の参加費が経費になるのはどんなときでしょうか。税理士などの解説記事では、次のような場面が挙げられています。
| 場面 | 解説記事での扱い |
|---|---|
| 取引先との付き合いのために一緒に出る | 交際費 |
| 社名入りのウェアで走り、宣伝にする | 広告宣伝費 |
| スポーツにかかわる仕事をしている | 仕事の経費 |
ただし、広告宣伝費には慎重な見方もあります。1人のランナーが社名入りのウェアで走っても、宣伝の効果は測りにくいからです。
よく聞かれる「健康のためなら仕事に役立つ」という理由は、通らないとされています。健康は、仕事にも暮らしにも役立つもの。仕事の部分だけを分けることができません。
会社が社員の参加費を出すとき
小さな会社の経営者なら、社員の大会参加を応援したいこともあるでしょう。この場合は、社員への課税に気をつけます。
会社が運動会などの行事の費用を出しても、参加した社員には課税しなくてよい。国税庁の通達はこう定めています。ただし、社会通念上一般的に行われている行事であることが前提です。
次の2つにあてはまると、この扱いは受けられません。
- 参加しなかった人に、代わりのお金を配る
- 役員だけを対象に、費用を負担する
マラソン大会は、希望者だけが出ることが多い行事です。解説記事では、希望者の参加費だけを出すなら、給与として扱うのが無難とされています。
全員に声をかけるのか、希望者だけを応援するのか。まずはここを決めておくと、処理に迷いません。
経費にするなら残しておきたい記録
仕事との関係を説明できるなら、その根拠を残しておきます。国税庁が「取引の記録などに基づいて」としているとおり、記録がないと説明できません。
たとえば、次のような記録です。
- 大会名・日付・金額がわかる領収書
- 誰と、何のために出たかのメモ
- 取引先と一緒に出たなら、その相手とのやりとり
- 宣伝として出たなら、社名入りのウェアを着た写真
- 会社の行事なら、全員に声をかけた案内文
メモは、支出した日に書いておくのがいちばんです。あとから思い出して書いた説明は、説得力が弱くなります。
私はどうしたか
調べた結果、私はマラソンにかかる出費を経費にしないことにしました。
マラソンは、仕事のイメージアップにつながっていると感じます。LPでも、走っていることを紹介しています。
それでも、水都大阪は開業前から10年続けている大会です。出る目的は、仕事ではなく自分の目標。シューズも、週3〜4日の朝ランで履いています。仕事に必要な部分が50%を超える、とは言えませんでした。
もともと、迷ったら経費にしない考え方です。調べたうえで、同じ結論になりました。
次は、2027年4月の水都大阪で11年連続完走を目指します。5月の奈良では、60歳での100km完走が目標です。
経費にできるかどうかは、事業の内容や出た目的によって変わります。ご自身の場合で迷ったときは、税務署か税理士に確認してください。
よくある質問
Q. 健康のために走るなら、参加費は経費になりますか?
なりません。健康は仕事にも暮らしにも役立つもので、仕事の部分を分けられないためです。
Q. ランニングシューズは経費になりますか?
普段の練習でも履くなら、経費にはなりません。仕事の部分をはっきり分けられないためです。
Q. 取引先と一緒に大会に出たら、経費になりますか?
取引先との付き合いが目的なら、交際費として扱えるとする解説があります。誰と、何のために出たかを記録しておきます。
Q. 会社が社員の参加費を出したら、社員に税金はかかりますか?
全員が対象の一般的な行事なら、課税しなくてよいとされています。希望者の参加費だけを出すなら、給与として扱うのが無難です。
まとめ
マラソン大会の参加費が経費になるかどうかは、仕事との関係を説明できるかどうかで決まります。
趣味の大会なら、参加費もシューズも交通費も経費になりません。取引先との付き合いや宣伝なら、記録を残したうえで経費にできる余地があります。
経費の線引きで迷ったら、お気軽にご相談ください。一緒に整理します。
参考:国税庁「No.2210 必要経費の知識」「所得税基本通達45-1・45-2(家事関連費)」「所得税基本通達36-30(使用者が負担するレクリエーションの費用)」「No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行」