この記事でわかること
- 開業した年のインボイス登録日の選び方3つ
- 筆者が10月1日を選んだ理由
- 取引先の経理から見た「登録の有無」の違い
- 2割特例・3割特例で負担がどのくらいになるか
登録するかより「いつから」で迷いました
2026年9月に、山中経理DX事務所を開業しました。
インボイスの登録は、最初から決めていました。登録の有無は、取引先からの信用にかかわるからです。
迷ったのは、登録日をいつにするかでした。開業した年は、登録日の選び方が3つあります。どれを選ぶかで、消費税を納める期間が変わります。
開業した年の登録日は3つから選べます
免税事業者の個人事業主が、開業した年に登録する場合の選び方です。
| 選び方 | 登録日 | 申請のしかた |
|---|---|---|
| ① 開業した年の1月1日にさかのぼる | 開業した年の1月1日 | 開業した年のうちに申請する |
| ② 年の途中の日を希望する | 申請から15日以後の希望日 | 申請書に登録希望日を書く |
| ③ 翌年の1月1日から | 翌年の1月1日 | 前年の12月17日までに申請する |
①は、国税庁の新規開業者向けQ&Aで案内されている特例です。登録日は1月1日になりますが、申告するのは実際に事業を始めた日以後の取引です。
個人事業主の「課税期間」は、1月1日から12月31日までの1年間です。年の途中で登録しても、この区切りは変わりません。
私が10月1日を選んだ理由
私は②を選び、登録希望日を10月1日にしました。申請は9月1日に、e-Taxで出しています。
翌年1月1日への後ろ倒しも考えました
③を選べば、年内の売上に消費税はかかりません。数字だけ見れば、少しだけ得です。
それでもやめたのは、営業上のマイナスが大きいと考えたからです。10月から12月は、法人のお客様との話が動く時期でした。
開業したばかりで登録番号がないと、相手に余計な確認をさせてしまいます。3か月分の税金の差は、判断を左右するほどではありませんでした。
1月1日にさかのぼる方法は使いませんでした
私は開業届を出す前から、業務委託の仕事をしていました。さかのぼって登録すると、その分の取引まで消費税の対象になるおそれがあります。
9月30日までは免税事業者のまま。10月1日から登録。私にとっては、これがいちばん素直な形でした。
開業前の取引をどう扱うかは、人によって事情が違います。迷ったときは、税務署か税理士に確認してください。
ちなみに私の場合、申請から10日ほどで登録番号が決まりました。
取引先の経理から見た「登録の有無」
私は以前、会社の総務部長をしていました。取引先に支払う側の立場です。
その頃、取引先が登録しているかどうかで、印象が少し違うと感じていました。登録していない相手への支払いは、消費税の扱いを分けて処理する必要があるからです。
10月から、支払う側の負担が少し増えました
免税事業者への支払いでも、支払う側は消費税の一部を差し引けます。この割合が、2026年10月から8割から7割に下がりました。その後も段階的に下がる予定です。
| 期間 | 差し引ける割合 |
|---|---|
| 2026年9月まで | 80% |
| 2026年10月〜2028年9月 | 70% |
| 2028年10月〜2030年9月 | 50% |
| 2030年10月〜2031年9月 | 30% |
| 2031年10月以降 | 0% |
取引先がインボイス登録を求めてくる背景には、こうした事情もあります。
負担はどのくらい? 2割特例と3割特例
登録すると、消費税を納めることになります。ただし、個人事業主には負担を軽くする特例があります。
| 年分 | 使える特例 | 納める額 |
|---|---|---|
| 2026年(令和8年)分 | 2割特例 | 売上にかかる消費税の2割 |
| 2027・2028年(令和9・10年)分 | 3割特例 | 売上にかかる消費税の3割 |
| 2029年(令和11年)分以降 | なし | 原則の計算か簡易課税 |
たとえば税抜の売上が100万円なら、売上にかかる消費税は10万円です(税率10%の場合)。2割特例なら、納めるのは2万円です。
どちらの特例も、事前の届出は要りません。確定申告書に、特例を使う旨を書き添えるだけです。
2割特例は、2026年9月30日を含む課税期間までの特例です。個人事業主なら2026年分が最後。10月に登録しても、2026年分には使えます。
2年前の課税売上高が1,000万円を超える年などは、どちらの特例も使えません。
登録の前に確かめておきたいこと
登録日を決めたら、次の4つも確かめておくと安心です。
① 登録すると、2年ほどは免税に戻れません
年の途中から登録した場合は、しばらく免税事業者に戻れません。期限は、登録日から2年を過ぎる日を含む年の12月31日です。10月1日の登録なら、2028年12月31日までです。
この期間は、2割特例と3割特例を使える期間とちょうど重なります。
② 取引先に登録番号を伝える
登録番号が届いたら、取引先に知らせましょう。私も、番号が決まった日に取引先へ連絡しました。
③ 請求書の書き方を変える
登録日以後の請求書には、登録番号や、税率ごとの合計額と消費税額などを載せます。私は請求書のひな形を作り直し、税率ごとの消費税が自動で計算されるようにしました。
④ 会計ソフトの設定を見直す
年の途中で登録すると、同じ年に免税の期間と課税の期間が混ざります。私は会計ソフトで、9月30日までの取引を「対象外」の区分に分けました。
2割特例は、売上にかかる消費税だけで納める額が決まります。私の場合は、売上に正しい税区分が付いていれば申告できる形にしています。
よくある質問
Q. 年の途中で登録しても、2割特例は使えますか?
使えます。2026年9月30日を含む課税期間なら対象です。個人事業主の2026年分は、10月以降の登録でも使えます。ただし、2年前の課税売上高が1,000万円を超える年などは使えません。
Q. 登録希望日は、いつまでに申請すれば間に合いますか?
提出日から15日以後の日を、登録希望日にできます。翌年1月1日から登録するなら、前年の12月17日までに申請します。
Q. 開業した年なら、1月1日から登録できますか?
開業した年のうちに申請すれば、1月1日にさかのぼって登録を受けられます。申告するのは、実際に事業を始めた日以後の取引です。
Q. 一度登録したら、ずっと課税事業者ですか?
登録をやめる届出を出せば、免税事業者に戻れます。ただし年の途中から登録した場合は、登録日から2年を過ぎる日を含む年の末日までは戻れません。
まとめ
私が迷ったのは、インボイスに「登録するか」ではなく「いつから登録するか」でした。
最後は税金の差よりも、取引先との関係を優先して10月1日を選びました。2割特例と3割特例があるうちは、登録しても負担は大きくありません。
取引先から登録を求められて迷っているなら、登録日から考えてみてください。ご自身の場合はどうなるか、一緒に整理したいときはお気軽にご相談ください。
参考:国税庁「インボイス制度において事業者が注意すべき事例集(令和8年4月改訂)」「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問114」「新規開業者向けQ&A」